Pharmakon – ‘Abandon’ (Sacred Bones)

Abandon

結局今まで通り、統一アートワークですが、このジャケットはなかなかのキワモノ。写っているのは本人かどうか判りませんが、Margaret Chardiet 嬢によるソロ・プロジェクト。カセットやCDrの作品は幾つかあったようですが、LPになるとこれが初となる。この名義での活動は5年ほど経過しているそうですが、実験音楽シーンでは、実は17歳の頃から活動していたそうで、現在の年齢は不明ですが、経験値は高いお方でした。そして録音は Cult of Youth の Sean Ragon の自作スタジオで行われたそうです。彼女の音楽は、よくある実験音楽とは異なり、即興ではなくて曲としての体を成している。そして、ノイズ・ミュージックは男性のアーティストでほぼ占められているのを考えると、かなり稀な存在なんで、実験、またはノイズな音楽と語るには少し違うかもしれない。ヴォーカルと呼ぶには少々辛辣なものですが、うめき声と雄叫びも男性陣のそれらとは異なり、非常にクリア。また、ノイズと述べましたが、実際にノイズを感じる部分はほとんどなくて、彼女の声が一番やかましいくらい。それ以外の音の部分は、金属質なパーカッションが低速で配置され、ゴシックなフレーズがループするが、やはり混沌としたようなところはなくて鮮明。決して新しい音楽ではないですが、珍しい音楽ですね。

7.5/10

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Pure X – ‘Crawling Up the Stairs’ (Acéphale)

Crawling Up the Stairs

そもそもは Pure Ecstasy と名乗っておりましたが、改名と共に音楽的にも少し変化をしてましたね。でも、前作から2年ぶりとなる本作 Crawling Up the Stairs では、かなり変動があるではないでしょうか。 彼等が今回新たに手に入れたものはある種のフォーク。奏でられる音がアコースティックなギターが目立つようになったのと、照準を歌の部分に持ってきており、今までのような始まりや終わりも無いような、ぼんやりとしたものからは、かなり中心に音が寄っております。ですが、そのぼんやりと揺らぎのある感覚は残されており、それが Pure X の一番の要素になってることには変りありません。けだるさの中に見え隠れるする夢うつつなソウル。だけど、完全に信用して身を任せていると、たまに突き放すようにロックンロールが騒ぎ出す。全体像はフォークを身にまとい平たい印象だけど、彼等の歩調に合わせてゆっくりと聴いていると、不可思議な音で組み合わさってることに気付く。たぶん、メイン・ヴォーカルも曲によって違うと思われ、いい意味でアバウトな感じで、想像してた以上に幅広い。ここへの到達はとても面白いし、想定外。少なくとも自分は今まで体験したことのない時間でした。

9.0/10

Small Black – ‘Limits of Desire’ (Jagjaguwar)

Limits of Desire

今さらですけど、Small Black って、Big Black を意識した名前じゃないですよね。元大黒さんの角刈りおじさんがやっている現有バンドの新作が久々に出るそうで、そっちも楽しみですが、その前に小黒さんの新作です。彼等のことを語るときの必須ワード Washed Out よりも早い段階で現在の4人組に変え、デビュー作から3年間貯めての2作目。でも、そもそも Small Black を始めた Josh Kolenik と、途中から加わった2人は、Small Black 以前に共に同じバンドに在籍していたので、バンド内の関係は結構長かったりするのですね。Washed Out は、現在の早い流れに取り残されまいと思う結果、無理矢理バンド編成にしたりして、(ライブに関してですが)なんか焦りみたいなものを感じてしまったが、Small Black の本作 Limits of Desire を聴いた時、凄く落ちついているなあと感じた。それはバンド内の信頼関係が早くから築き上げられていたかもしれないし、またはある種の開き直りみたいなものも感じる。バンドであることをあまり意識せず、彼等の持ち味であるエレポップな要素を壊すことなく制作されていて、リズミカルだしエレクトリック色が強い。そして初期のチルウェーヴ云々なぼんやり感は減り、明確なエレポップに向った。実際のライブではもっと生音感がきっとあるんだと思うが、作品としてこの結果に不満はありません。ただ裏を返せば、4人組である理由が薄いのも事実ですが。

7.0/10

Xenia Rubinos – ‘Magic Trix’ (Ba Da Bing)

Magic Trix

今の場所に住むようになって1年とちょっと経ちましたが、行動範囲を少し広げ、ゆくりと歩くとまだまだ知らないお店がいっぱい出てきます。ただし、目に留まる店は大体しょっぱい感じのところばかりですけど。このブルックリンの女性も、危うく聞き逃すところでした。キューバ、プエルトリコ、そしてアメリカにルーツを持つという Xenia Rubinos さんは、自身の音楽にもその生まれ育ちを映し出しており、カリブとアメリカが混ざって朗らかに熱唱するのですが、なんか変だぞ。作品ではドラムやその他で Marco Buccelli が、お手伝いしておりまして、サウンド・マジシャンの肩書きに偽りなくトリッキーなドラムを叩きまくり。その複雑で変則的なリズムに合わせ、ギターを用いず、キーボードをキレよく、厚い音で演奏して結合させているのです。それらの後ろ盾と、Xenia Rubinos のソウルなヴォーカルが右往左往する感じ。複雑系のバンドは色々いますけど、彼女の場合は、サポート・マジシャンの影響も大ですが、根底にある特殊な音楽起源を最大限に活かして、自分世界をあっさり作ってしまった。ちょっと感じた違和感は、ただ単に新鮮だったから。これぞまさに、鮮烈デビュー。

7.5/10

Mikal Cronin – ‘MCII’ (Merge)

MCII

Ty Segall との絆は相当なものがありますね。2009年の初のコラボ作 Reverse Shark Attack に始まり、Ty のバンドのメンバーでもあり、互いの作品に参加したり、違うバンドでも同時にメンバーであったり、ツアーにも動向したりと、切っても切れない関係です。両者とも万能なプレイヤーであり、本作も基本的には全て Mikal Cronin が演奏して制作されているそうですが、もはや当然のように Ty Segall は参加しております。でも彼の参加は2曲のみで、その他に Charles Moothart と K. Dylan Edrich も参加しておりまして、前者は、Charlie And The Moonhearts, Epsilons の時にバンド・メイトだったドラマーで、最近では、Ty Segall らと Fuzz をやってるひと。そして後者は、Castle Face から出ていた The Mallard のヴァイオリン奏者、そして Thee Oh Sees の Petey Dammit も1曲参加してるようです。ゲストの参加は効果的に現れていて、それぞれの曲を味わい深いもにしています。でも、やっぱり基本的には Mikal Cronin の書く曲が全てで、改めて素晴らしい才能の持ち主であることを確認致しました。前作のデビュー時に比べると、歌の部分が凝縮されて、彼のソングライターとして高い能力をてきぱきと楽しめるようになった。これこそポップでキャッチーって呼ぶべき音楽だと思うんです。なのでもっと沢山に人に聴かれるべきアーティストだと思うし、Merge 移籍はそういう意味でも歓迎ですし、国内盤を出してもいいと思うんだけどな。前にも言ったと思うけど、Ty Segall と Mikal Cronin は、現在のUSインディ・シーンの若手では、頭ひとつ抜けたシンガーソングライターだと思う。

8.0/10